子どもたちに理科の楽しさを伝え、教員には理科教育に役立ててもらおうと、応用物理学会東北支部(安藤康夫支部長)は12月13日、「リフレッシュ理科教室~光を使って、音を伝えてみよう!~」を仙台市立愛宕中学校(八柳善隆校長)で実施し、同校2年生の生徒42名と理科担当教員らが参加した。
この教室は、講師を務めた東北大学金属材料研究所松岡隆志研究室が、今年7月に東北大学で開催された『学都「仙台・宮城」サイエンス・デイ』に出展し、仙台市教育委員会の「こども未来賞」を受賞したことをきっかけに実施されたもの。
※松岡教授は、1989年(当時 NTT基礎研究所研究員、現 東北大学教授)、青色LED用の発光層として、窒化インジウム・ガリウム(InGaN)の単結晶の薄膜成長に世界に先駆けて成功している。
次に、光を伝える光ファイバと、光を生み出す発光ダイオード(LED)や半導体レーザについて、構造や原理を詳しく解説。生徒らは、現在の大容量・長距離の光ファイバ通信がどのように実現されているかを学んだ。
この実験で生徒らは、光を使えば、離れていても信号を飛ばせること(光通信の原理)や、色の異なる光は混じっても、カラーフィルタで特定の色の光だけを抽出することによって、望みの信号だけを取り出せること(波長多重通信)を体験。また、LEDよりも指向性と単色性に優れた鋭い光を出せる半導体レーザを用いた方が遠くまで通信できることや、さらに光ファイバを用いることで、より遠くまで自在に通信可能であることも、演示実験で学んだ。
谷川助教は「今日皆さんは、光の三原色の原理と、色(波長)の異なる光を1本の光ファイバに通し、相手で分割して送信する『波長分割多重通信』の原理を体験した。これが一度にたくさんの情報を通信できる理由であり、これと同じ原理で、現在の光通信が行われている」とまとめた。
生徒らはグループに分かれ、赤・青・緑・白色のLEDを40個ずつ音声送信機につなげたり、太陽電池やスピーカなどを配線して受信機を組み立てたりして、協力し合いながらクリスマスツリーに飾り付けを行った。
そして、やっとクリスマスツリーが完成。教室を暗くし、装置に電源を入れた瞬間、点滅したLEDの光で受信機から音楽が流れると、生徒らは「光った!音楽もちゃんと聴こえた!!」と歓声をあげていた。
担当した片山准教授は、「光って綺麗だな、音が鳴って綺麗だな。そんな感激がきっかけとなって、僕らは研究を続けている。それは他人から強制されるものではない。今日のように本人たちから拍手が出るような、そんな自発的な感激を少しでも与えられたら」と話していた。
見学した理科担当教員は「発展的な学習内容を直に学ぶことができ、我々も勉強になった。高度で難しい内容であっても、原理まできちんと教えた方が、生徒たちも楽しく理解できると感じた」と話していた。
片山准教授は、「本企画に対してご援助をいただいた応用物理学会本部、総計一千個もの発光ダイオードを寄付いただいた日亜化学工業株式会社、ならびに貴重な機会をご提案くださった仙台市教育局の清野俊也氏、愛宕中学校の八柳善隆校長、河村幸奈教諭に心より感謝申し上げたい」と謝辞を述べている。