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サイエンス・デイ オブ ザ イヤー2022(JST理事長賞)受賞企画概要

20181103-8

1.出展プログラム名

ライト博士と光のミステリー

2.出展団体名

仙台高等専門学校 名取キャンパス

3.構成員名簿(氏名・学年)

氏名 役職・学年
千葉蓮 部長・4年
羽渕輝貴 4年
小澤寛
佐藤虹斗
一戸碧人
高橋李夏
中林和奏
海藤那央 3年
永澤廉
千葉海斗
船山亮太
伊藤条 2年
佐藤星斗 1年
平塚遥人

4.受賞コメント(約400字)

この度のサイエンス・デイAWARDでは3賞を頂いた他、サイエンス・デイ・オブ・ザ・イヤーにおきましてはJST理事長賞を頂きましたこと、誠にありがとうございました。私たち仙台高等専門学校名取キャンパスでは、学生主体による地域の理科教育支援活動として、近隣の小中学校における科学の出前授業に長年取り組んで参りました。しかし、本取り組みでは、コロナ禍の自粛により、それ以前の活動経験者も不在になってしまっていたため、これまでのノウハウや伝統を一から積み上げさせて頂くつもりで、本年度の出展に挑戦させて頂きました。今後の活動では、ご来場者の皆様の笑顔や暖かいご声援とともに、頂きました賞をバネに、少しでも多くの皆様に科学の楽しさに触れて頂けますよう、努力を重ねて行ければと願っています。また、特定非営利活動法人natural scienceの皆様には、例年、サイエンス・デイの運営に多大なご尽力を頂いておりますこと、この場をお借りし、心より感謝申し上げます。

5.プログラム紹介文

みなさん、ライト博士の実験室にようこそ!普段、目にしているのに、あまり意識したことのない「光」。テレビの画面って何色?なぜ、いろいろな色が見えるの?見えない光ってあるの?「光」ってなんだろう?この実験室を出た後には、「光」を見る目が変わるかも・・・。ライト博士といっしょに「光」に光を当て、「光」のミステリーにチャレンジしよう!

6.趣旨・ねらい(どのようなことをねらいとして、出展内容を考えましたか?)

私たちは、科学の出前授業に長年取り組んできました。それらの活動の中では、子ども達より「光ってなに?」、「どうして、いろいろな色が見えるの?」、「何故、夕焼けって赤いの?」、「リモコンってどんな仕組?」など、「光」についての数多くの質問を受けてきました。この度の出展では、これらの疑問に応えるため、「直接見えない光の視覚化」、「参加者と一緒に考える実験」、「対話を重視した実施構成」など、ご参加頂いた皆様との体験的で視覚的な実験を意識して出展をさせて頂きました。

7.具体的な出展内容(6.の目的を実現するために、どのような出展内容としましたか?)

7-1.オープニングにおける工夫

● 参加者に対する興味の引き出し:大掛かりな演示実験による更なる興味の引き出しは、その後の実験への期待や集中力を高めるための大きな効果を持つ場合が多い。本出展では、スモークマシンによる煙の中で、He-Neレーザー光を教室の壁に貼った鏡で数回反射させ、その効果として活用した。出展開始の冒頭に現れる参加者の頭上を行き交う鮮やかなレーザー光は、その効果を十分に発揮したものと思っている。

7-2.様々な光の紹介

● 光についてのイメージの確認:「光るものってなに?」の子ども達への質問と対話を通して、子ども達がイメージしている「光」について、参加者間での確認を行う。子ども達には、「太陽」、「電灯」、「テレビ」など、「目に見える光」のみがイメージされていることが確認される。また、「スマートフォンって、どうして光っているの?」の質問をもとに「有機EL」、その他の光の例として「レーザー光」を実際に見てもらいながら、様々な光についてのイメージや知識の拡張につなげた。

● 見えない光:上述の質問と対話を受け、「見える光だけが光?」の質問を通して、子ども達とともに「光の種類」について考える。リモコンによる赤外線のビデオカメラを利用した観察や、蛍光剤を含む洗剤で書いた文字を紫外線で発光させることで紫外線を確認するなど、「見えない光」を身近なものを利用して観察する方法とともに、間接的に確認できることを明示した。

7-3.光の三原色と色の識別

● ディスプレイの色:写真や動画を表示する「ディスプレイって何色?」の質問をもとに、光と色の関係について考えていく。ディスプレイの観察は、スマートフォンの画面をビデオカメラとルーペを組み合わせて拡大することで行い、画面が赤・緑・青の3色のみで構成されていることを確認する。この観察から、各種の色が「光の三原色」によって表示できることを検証していった。
● 光の三原色:上記の再現実験として、赤・緑・青色の3つのスポットライトを用い、白色を含む様々な色をスクリーン上に表示し、光と色の関係を理解していった。
● 人による色の識別:上述の実験より、人の目は赤・緑・青の3色のみしか識別できていないことが分かるが、人が他の色をどのように識別しているのかを確かめる実験を用意した。透明のアクリル製の円盤を3分割し、各扇型部にそれぞれ赤・緑・青色のフィルターを貼り、光を透過させた状態で円盤を回転させる。観察者の目には、3色が個別に見えているはずであるが、実際には白色に見える。この実験より、人が三原色以外を認識する際に、三原色をもとに脳内で様々な色を合成することで認識していることを考察してもらった。

7-4.光の波動性および波長と色

● 光の波動性:重ねた2枚の偏光板どうしの角度を変化させながら、受講者一人ひとりに光の透過・遮蔽現象を観察してもらい、受講者とともに、現象の理由を考えながら、光の波動性を理解してもらう。現象の理解のために、大型の偏光板の模型(スリットを入れたアルミニウム板)を使用し、光に見立てたバネをスリットに通し、偏光板どうしの角度によるバネの振動の伝搬・遮蔽によって、光の波動性の理解を深めて貰えるとように工夫を行った。
● 光の波長と色:光の波動性の再確認および波長と色の検証のため、セロファンテープを貼ったアクリル板を偏光板で挟み、光の透過の様子を観察して頂いた。セロファンテープには、透過光の波長(色)によって、波の振動の角度を変化させる性質がある。そのため観察者には、透過光と偏光板のスリット方向が一致した色の光のみが観察される。受講生とともにこの現象を考えながら、光の波動性の再確認および波長と色の関係について理解して頂く。また、この現象の応用と子どもの興味の引き出しを目的として、偏光板を通した透過光が、人気のキャラクターに見えるようにセロファンテープを貼ったアクリル板も紹介し、家庭でも工作や実験が可能になるように工夫した。
● 偏光板による遮光璧:2枚の偏光板を組み合わせて貼った透明なパイプ内には、光の遮蔽によって壁ができたように見えようになる。本出展では、このパイプにボールを通してマジック風に見せることでメリハリを設け、来場者を実験内容に集中させるような工夫を行った。
● 光の回折現象と色:目の細かいふるいを透過した光は、ヤングの実験の原理によって、光の波長に応じた間隔の明点をふるいの後方に映す。実験では、赤・緑・青色のレーザー光を用い、光の色によって明点の間隔が異なることを示しながら、光の色が波長の違いで生じていることを体感的に理解して頂く。

7-5.光の分光と自然現象

● 分光器による様々な光の観察:光の合成による光の三原色と色の関係とは逆に、身近な光源の光を含まれる各種の色として分離することで、光源そのものや自然現象を理解することが可能になる。本出展では、蛍光灯や太陽光等の光を来場者一人ひとりに観察して頂くことによって、光源に含まれる色の種類の違いおよび虹や夕焼けなどの自然現象の原理の理解に繋げて頂いた。
● 太陽光と虹:分光器による太陽光の観察の際には、太陽光の直視を避けるため、各来場者には、椅子に座った状態で、その場で窓の外の野外光の観測をお願いした。また、他の光源と太陽光との違いを理解して頂くために、蛍光灯などの室内光との比較を意識しながらの観察を行った。本実験では、太陽光が可視光領域の波長を連続的に含む白色光であることを確認して頂くとともに、虹が水滴による分光現象であることに繋げていく。
● 朝焼け・夕焼け:本再現実験では、水のみを入れた大型のメスシリンダーの下部から光を当て、空気中の微粒子の代わりとしてフロアワックスを徐々に加えながら、メスシリンダー上部の天井が赤色に変化する現象を観察して頂いた。更に、本実験のレイリー散乱現象を確認するために、フロアワックスを入れた状態のメスシリンダーの下部から赤色と青色のレーザー光を照射し、天井に赤色レーザーの光のみが届く実験を用意した。

7-6.光の屈折現象

● 消臭ビーズによる光の屈折現象:一般に販売されている消臭ビーズは、ほぼ水と同じ屈折率を持つ。そのため、容器に消臭ビーズを入れたのみでは、球形の消臭ビーズによる乱反射によって、消臭ビーズを通して透明容器の後方を見ることは難しい。しかし、消臭ビーズの入った透明容器に水を加えた場合は、光の屈折がほぼ消失し、容器の後方がはっきりと見えるようになる。本出展では、参加者を飽きさせないための実験中の芝居として、殺人事件の凶器を探すため設定を用意し、容器に水を注ぐことで、後方の凶器の絵が現れる実験において本現象を活用した。
● 光通信における全反射現象:光ケーブルを活用した光通信は、多くの家庭でもインターネット等で利用されている。光ケーブル中を光が遠くまで届く現象は、光の全反射現象が利用された典型的な応用事例である。本出展では、アクリル棒で作製した光ケーブルの模型にレーザー光を通して見せる実験も準備した。

8.出展内容を説明する写真や図(1点以上)

20221001-2-5
オープニングにおけるHe-Neレーザー光を用いた実験。レーザー光が見えるように、スモークマシンによる煙中を、教室の壁に貼った鏡に数回反射させている。
20221001-2-5
紫外線の可視化のため、蛍光剤入り洗剤で書いた文字を紫外線で表示した。
20221001-2-5
赤・緑・青色の3つのスポットライトを用いた光の三原色の実験。
20221001-2-5
光の三原色の確認のため、スマートフォンの画面を、ビデオカメラにルーペを取り付けて拡大して表示した。
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光の波動性の検証のため、偏光板の模型(スリットの入った板)のスリットに、光に見立てたバネを通し、振動を観察している様子。
20221001-2-5
偏光板を組み合わせ、光の遮蔽部に壁があるように見えるパイプに、ボールを通す実験をマジック風に示した。
20221001-2-5
夕焼けの再現実験として、少量のフロアワックスを混ぜた水に、赤色と青色のレーザー光を通し、赤色レーザー光の透過距離が青色よりも長いことを示した。
20221001-2-5
光の屈折実験として、消臭ビーズを入れた透明容器に水を入れることで、後方に置いた絵が見えるようになることを示した実験。

9.科学を社会に伝えるために、特に工夫していること・意識していることは何ですか?

① 実施内容のテーマ性の設定:実施内容にテーマ性を持たせることで、受講者における内容の伝わりやすさや実施側にとっての構成のしやすさから、より深い内容への発展性を生みやすくさせている。また、実施側にとっての構成のしやすさは、実施時における進行のしやすさにも繋がっている。
② 実施側の役割分担の明確化:実施側の各参加者には、進行者(博士役)、進行者のアシスタント(助手役)、会場全体の補佐(研究員役)など、受講者の子どもにも分かりやすい役割分担を明示する(受講生や実施者が大人数になる場合は、各実施者に名札を付ける)ことで、受講者が誰の話を聞き、困った際に誰に質問すれば良いのかが分かりやすくなる。また、その結果として、実施の際のスムーズな進行に繋げている。
③ 受講者に考えさせる工夫:受講者との対話を重視し、実施側および受講者からの質問のしやすい雰囲気づくりに心がけている。また、実施側からの疑問や質問については、進行者による指名や挙手の促し、三択の提示など、進行者(博士役)が実施時の雰囲気に合わせて、段階に応じた選択ができるように工夫している。
④ 体験的・視覚的な説明の重視:一般に受講者への説明は、年齢に関係なく、文字、口頭、イラスト、実験の順に伝わりやすくなる傾向がある。本出展では、第一に実験、第二にイラストによる体験的・視覚的な説明を重視し、口頭や文字による説明はあくまでも補助的なものとしている。ただし、文字による説明は、受講生に文章を読ませることがないように、最低限の単語のみに限定し、小さな子どもにも短時間でイメージが掴みやすいように配慮している。
⑤ テンポを重視した構成:メリハリのない実験の一方的な提供は、科学に対する興味の度合いや年齢に関係なく、進行時間に伴って集中力を低下させる。内容の構成は、無理のない範囲で、工作等の体験型学習、全員で観察する演示実験、マジックや芝居等の演出を組み合わせながら、テンポのよい展開を心がけている。本出展においては、1回の講演時間を1時間としたが、受講生を飽きさせることなく、テンポよく進めるための実験数は10個程度として講演全体を構成している。また、実施時間が余った際も想定し、数種類の予備実験も準備した。
⑥ 自宅でも実施可能な実験の検討:本出展では、出展への参加時のみの実験に留まることがないように、自宅でも継続して実験が可能なものになるように検討を重ねた。また、出展時には、家庭でも比較的簡単に実施可能な実験の紹介も心がけた。出展後の自宅における継続した実験は、「復習」や「考える力」、「集中力」などの涵養にも繋がるものと考えている。
⑦ 親子による参加の推奨:子どもの科学への興味・関心の育成には、その子どもと多くの時間を共に過ごす保護者の科学に対する理解が何より重要と考えている。本出展では、親子による出展への参加を推奨しており、子どもの工作や実験の手伝いとしての保護者の付き添いではなく、保護者にも子どもとまったく同一の工作や実験への参加を求めている。そのため本出展では、大人にこそ楽しんでもらえる科学を重視した。

10.その他、アピールポイントなど、ご自由にご記入ください(自由記入欄)

 仙台高等専門学校名取キャンパスは、出前授業を通した地域理解教育支援を目的に創設された団体になります。その活動も本年度で16年になり、それらのノウハウと伝統が参加学生間で伝承され続け、積み上げられてきました。しかし、ここ数年のコロナ禍においては、活動の自粛が続き、本出展経験者の皆無の状態によるノウハウや伝統の継承も途切れた状況にありました。
 本年度の出展は、それらの一からの積み上げのつもりでチャレンジさせて頂いたものになります。地域の理科教育支援を目的とした本団体の出展内容としては、16年間の蓄積に及ぶものではありませんでしたが、本年度に頂きました多くの評価は、今後の励みとして十二分に大きなものでした。この度の出展の経験を新たな第一歩として、今後の活動に継承していければと願っています。今後とも、本活動に対するご支援とご厚情を頂けましたら幸いです。

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