ホーム > お知らせ > サイエンス・デイ オブ ザ イヤー2023(文部科学大臣賞)受賞企画概要

サイエンス・デイ オブ ザ イヤー2023(文部科学大臣賞)受賞企画概要

1.出展プログラム名

医学生×きょうゆうプロジェクト presents 「音楽会と体験で学ぶカラダのしくみ!~声・耳・眼のふしぎ~」

2.出展団体名

東北大学COI-NEXT「VISION to CONNECT」拠点・国立大学法人東北大学医学部・きょうゆうプロジェクト・医学生プロジェクトチーム

3.構成員名簿(氏名・学年)

氏名 役職・学年
宮下琳太郎(みやしたりんたろう) 医学科5年・「きょうゆうプロジェクト」共同代表・ヴァイオリニスト【音楽会企画】
森里香(もりりか) 「きょうゆうプロジェクト」共同代表・ヴァイオリニスト【音楽会企画】
立石正規(たていしまさき) 医学科5年【音楽会企画】
夏井康樹(なついこうき) 医学科5年【音楽会企画】
野村優(のむらゆう) 医学科5年【音楽会企画】
吉永健人(よしながけんと) 医学科5年【音楽会企画】
尾本周作(おもとしゅうさく) 工学部2年【音楽会企画】
佐藤葵(さとうあおい) 歯学部2年【音楽会企画】
新田友海(にったゆう) 医学科4年・「眼のふしぎ」学生チーム代表【展示企画】
小澤一貴(おざわかずき) 医学科4年【展示企画】
菅原優人(すがはらゆうと) 医学科4年【展示企画】
長井春樹(ながいはるき) 医学科4年【展示企画】
本田慧(ほんだけい) 医学科4年【展示企画】
松本直(まつもとなお) 医学科4年【展示企画】
北村開志(きたむらかいし) 医学科4年・「きょうゆうプロジェクト」広報/学生奏者(ピアノ)・【音楽会企画】【両企画統括】
佐藤大夢(さとうたいむ) 東北大学病院眼科 医師【監修】
星佳佑(ほしけいすけ) 東北大学病院眼科 医師【監修】

4.受賞コメント(約400字)

 サイエンスデイ・オブ ザ イヤーは「科学を社会に伝える方法論」が最も優れている出展プログラムを表彰することで、科学を社会に伝える”よい”方法論を共有化することを目的としています。今回は、未知のことも多く難しい人体の仕組みについて「どのように伝えるか」ということを各企画で深く議論し、実践したことが受賞につながったと考えています。
 今回は、東北大学COI-NEXT「VISION to CONNECT」拠点のもとで出展した、2つの学生主体の企画での共同受賞となりました。きょうゆうプロジェクト・医学科5年生中心のチームで製作した演奏会企画「なぜ声は出るの?聴こえるの??音と医学のアンサンブル?」と、医学科4年生チームで製作した「眼のふしぎを体験してみよう!」は、ともに当日多くのお客様にお楽しみいただくことができました。身近な科学のプロセスの体験を提供するという点のみならず、子どもの健康増進という面でも社会に貢献できる内容となっていたと思います。
 仙台市は、サイエンスデイを筆頭に教育現場の科学への関心度が高く、先進的な取り組みが多くあります。この地盤で医学生や音楽家の立場でできることを今後も模索を続けます。

5.プログラム紹介文

【音楽会企画】なぜ声は出るの?聴こえるの?~音と医学のアンサンブル~
「声はどうして出ているの?」「音が耳に伝わる仕組みって?」「音は脳にどうやって伝わるの?」みなさんは知っていますか?そんなギモンを一緒に解き明かしていきましょう!今回は病院や医療施設などで演奏活動をするきょうゆうプロジェクトと現役医学生がスペシャルコラボ!ヴァイオリンとピアノの生演奏や、ちょっとした実験を交えつつ声のヒミツや耳のカラクリに迫ります。

【展示企画】眼のふしぎを体験してみよう!
東北大学医学部の学生が「眼のふしぎ」をご説明します!
眼はいつも使っているけど意外と知らなかったということも多いかも…?
不思議な眼の反応も体験してみよう!

6.趣旨・ねらい(どのようなことをねらいとして、出展内容を考えましたか?)

【音楽会企画】なぜ声は出るの?聴こえるの?~音と医学のアンサンブル~
①子供も大人も、幅広い客層の方にとって有意義なものとなるよう、それぞれの世代の関心に触れることができるようにする。
②生演奏や楽器といった音楽の要素を盛り込むことで、「科学」により親しみを持ちながら学び、公演としての魅力を高める。

【展示企画】眼のふしぎを体験してみよう!
きわめて身近で、常に使っている臓器である眼の「調整プロセス」を体感し学んでもらうことで、ヒトの体にも「うまくできているプロセス」があることを実感できるようにする。出展を通して、参加者が身近な所にも不思議が存在していることを知り、それを解明していくという科学の営みへの関心を持てる構成とする。

7.具体的な出展内容(6.の目的を実現するために、どのような出展内容としましたか?)

【音楽会企画】なぜ声は出るの?聴こえるの?~音と医学のアンサンブル~

 1.大学病院の医師の監修のもと、複雑な耳のしくみの解説講座を、小学生でも理解し得る平易な表現で作成し、現役医学生が説明をするという形式をとって発表を行う内容とした。
 2.音にまつわる人体の仕組みと音楽の組み合わせで、幅広い層の興味に応える内容とした。
 3.理解促進のため、中耳の構造物の模型や内耳の模式的なからくり装置を作成し、講演の中で用いた。原理の説明が高度な場合は、その場で実験(声帯の振動、閉管気柱の共鳴など)を行い、現象を実際に見て体験できるようにした。使用したからくり装置はは、講演後きょうゆうプロジェクトのブースに移設し、装置を実際にそばで見て体験することができるようした。
 4.現在の科学で分かっていないことを明確にし、子供が今後も科学に興味を持ち続けられるような結語とした。
 5.小さなお子さんをお持ちの親世代に向けて、気を付けるべき耳の疾患について、簡単な解説を加えた。疾患の早期発見、早期受診を目指し、健康増進・啓発的側面も取り込んだ。

 1.きょうゆうプロジェクトに所属するプロ奏者、学生奏者を起用し、生の音楽を聴く機会を提供できる構成とした。音楽会として、科学の講演会として楽しめるよう工夫した。
 2.演奏のほか、物理現象の説明にも楽器を用い、また、音楽を聴きながら耳の機能を体験できる実験も取り入れ、要素としての音楽と科学の親和性を高めた。
 3.公演中BGMなどを生演奏することで、本講演そのものを特別で印象深いものに演出し、この場で学んだことやからだの科学的側面への興味がイベント終了後も持続するような構成とした。

【展示企画】眼のふしぎを体験してみよう!
 1 ピント調節の体験   
 金魚鉢と虫眼鏡を用いてピント調節や眼鏡の仕組みを理解できるようにした
 2 虹彩の仕組みの実験   
 巾着と色付きライトを用いて虹彩による光の調節機構を理解できるようにした
 3 目の不思議の体験   
 気軽にできる盲点の実験を体験できるようにした
 4 目をしらべる機械の体験
 MYAH(マイヤ)やimo(アイモ)と呼ばれる機械を設置し、実際に体験できるようにした
 5 目の解剖の映像展示   
 本イベント用に撮影したブタの目の解剖映像を展示した
 6 ポスター展示   
 目の仕組みや他の動物の話を展示で紹介した

8.出展内容を説明する写真や図(1点以上)


 

【音楽と科学を組み合わせた過去の公演例とサイエンスデイの演奏の様子】
(1枚目写真の公演名「眼からウロコな音楽会♪」2023/3/11 利府イオン)
 進行は講師役と生徒役の二人で行った。生徒役は聞き手を代表する立場として機能し、聞き手の理解を助ける。サイエンスデイでは講師役のみ白衣着用、生徒役は非着用とすることで、視覚的にも講師役・生徒役の区別がつきやすくなるようにした。

  

【演奏会企画で使用した模型(作成:尾本周作)】
 1枚目・2枚目は「内耳」内部の細胞の模型、3枚目は「中耳」の耳小骨の模型である。当日はこうした模式的な模型を用いながら解説を行い、難しい内容も直感的に理解できるような構成とした。

 

【眼のふしぎについて企画した体験ブースの様子】
 対光反射実験(瞳が光によって大きくなったり小さくなったりすることを体験)、ピント調節(金魚鉢と虫眼鏡を用いてピント調節を体験)、虹彩の仕組み(巾着と色付きライトを用いて虹彩による光の調節を体験)、目の不思議(錯視や盲点を体験)、ポスター展示(目の仕組みや他の動物の話を展示で紹介)など、小学生でも分かりやすく理解できるような内容とした。また、夏休みの宿題に役立つ実験の解説を配布し、自宅で気軽に科学にチャレンジできる機会が得られる工夫を凝らした。

9.科学を社会に伝えるために、特に工夫していること・意識していることは何ですか?

 「音を聴く」「声を出す」「ものを見る」という、いわゆる「五感」に関するきわめて日常的な内容を題材とすることで、人間はただ暮らしているだけでも科学的な営みをしているということへの理解を促進し、すこしでも科学に対して感じる「敷居の高さ」を取り除くことをひとつの目的としている。
 演奏会企画(聴覚・発声)ではこの目的のために、身近な例や巷で知られていることを例示しながら、平易に、かつ親しみやすい公演内容となるような工夫を凝らした。展示企画(視覚)では、最先端の機器の展示のみならず、眼に備わっている様々の調節機構を身近なものを用いて体験できる企画内容とした。また「医学も総合科学」であるということを伝えるべく、各器官の生理学的なしくみはもちろんのこと、眼内で光の屈折とレンズの厚さの関係や音の共鳴現象のなど物理学的な側面にも着目し、概要の簡単な理解を促す内容とした。演奏会・展示の両企画において、簡単に手に入るものを用いた自宅で再現可能な実験を盛り込むことで身体の仕組み、すなわち医学を身近に感じられる構成とした。
 同時に、演奏会企画には音楽家が積極的に公演の作成にかかわることによって、それぞれの事象や効果についての理解に適切な音楽や効果音を選択し理解の助けとするのみならず、より親しみやすさを演出することも考慮した。

10.その他、アピールポイントなど、ご自由にご記入ください(自由記入欄)

 きょうゆうプロジェクトでは、大学病院の診療科と連携し、疾患の一次予防を目的とした公演の制作実績がある。疾患の早期発見、早期受診はどの診療科においても抱える課題であり、その背景には医療者と一般市民との心理的な距離も一要因として挙げられる。そこに音楽という要素を加えることで、この課題の解決に寄与できると考えており、今回もそうしたことを念頭に演奏会を製作した。
 また、仙台市・東北地区に定着し多くの市民に親しまれているサイエンスデイにおいて、来場者にとっての身体に対する科学的思考への入門の場として、医学生が専門の医師の監修のもと眼に関する正しい知識を広く提供する場を設けられたことは、科学・とくに眼科医療に対する社会全体のリテラシー向上にも寄与するものとなった。小児の近視をはじめとした眼疾患が社会問題化しつつある現代社会におけるこうした啓発活動は、公衆衛生の観点からも非常に有意義であったと考えられる。
 音楽会・展示の両企画において、医学生が医学的知識を社会の中で実践する機会を設けたことは、出展者たる学生の教育的観点からも意義深いものとなった。

お知らせの最新記事


TOP