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大草芳江が日本化学会「第36回 化学教育有功賞」を受賞しました

 特定非営利活動法人natural scienceの大草芳江理事が、「学都『仙台・宮城』サイエンス・デイの創設による理科教育への貢献」の成果により、日本化学会「第36回 化学教育有功賞」を受賞しました。この賞は、1878年(明治11年)に創立され、アメリカ化学会に次ぐ世界で2番目に大きい化学の学会で、現在会員3万数千人を擁している日本化学会が、「化学教育に従事しその組織または地域において教育上顕著な業績または功績のあった者、もしくは独創的な着想に基づく教育や評価方法の考案によって教育上、顕著な貢献のあった者」に授与するものです。大草理事が、大学・研究所や企業、行政や教育機関などが集まる宮城県仙台市の地域特性を活かし、組織の枠を超えた多様な主体と連携のもと、「科学・技術の地産地消」をスローガンに掲げ、地域の知的資源を教育的価値へと還元する活動の中心的な役割を担ってきた点が評価されての表彰です。表彰式は2019年3月17日に甲南大学岡本キャンパスにて開催された日本化学会表彰式第99春季年会にて執り行われ、川合眞紀会長から表彰楯が授与されました。

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(2019年3月17日に甲南大学岡本キャンパスで執り行われた日本化学会表彰式のようす)

  社団法人日本化学会ホームページ
  日本化学会 各賞受賞者一覧

【選定報告書】

化学教育有功賞
大草 芳江(特定非営利活動法人 natural science 理事)
学都「仙台・宮城」サイエンス・デイの創設による理科教育への貢献
Contribution to Science Education through the founding of the “Sendai-Miyagi Scienceday”

 大草芳江氏は、2005年3月に東北大学理学部を卒業後、同大学大学院生命科学研究科博士課程前期2年の課程に進学し、在学中の2005年11月に有限会社FIELD AND NETWORK を設立し取締役に就任、2007年5月に特定非営利活動法人natural scienceを設立して理事に就任し、現在に至っている。
 大草氏は、大学・研究所や企業、行政や教育機関などが集まる宮城県仙台市の地域特性を活かし、組織の枠を超えた多様な主体と連携のもと、「科学・技術の地産地消」をスローガンに掲げ、地域の知的資源を教育的価値へと還元する活動の中心的な役割を担ってきた。以下に大草氏の業績の概要について述べる。

1.特定非営利活動法人 natural scienceの設立

 科学や技術の“結果”だけでなく“プロセス”を共有できる場づくりを通じて、知的好奇心がもたらす心豊かな社会の創造に資することを目指し、大草氏は同世代の研究者や学生とともに、natural science を立ち上げた。その活動の中心は、一般向けの体験・対話型の科学イベント『学都「仙台・宮城」サイエンス・デイ』(以下サイエンスデイ)の企画運営と、中長期スパンで科学的な基礎力と創造力を育成する小中高校生向け講座『科学・技術講座』のカリキュラム開発・実施である。

2.学都「仙台・宮城」サイエンス・デイの創設と広がり

 現代社会は科学・技術が高度に発達した反面、ブラックボックス化も進展している。それがもたらす便利さと引き換えに、科学や技術の“プロセス”を五感で感じられる機会は失われ、科学や技術の“結果”のみを一方的に享受するだけの受け身の姿勢が、科学離れや科学リテラシー不足など科学技術立国日本の根底を揺るがす社会的リスクにつながっているのではないか。そのような問題意識を抱いていた大草氏は、科学や技術の“プロセス”を子どもから大人まで五感で感じられる場づくりを目指し、体験・対話型の科学イベントであるサイエンスデイを創設した。初年度(2007年)はnatural science 1団体のスタートであったが、現在は100を超える出展と1万人以上の来場を誇る全国最大級の科学イベントにまで成長させた。
 さらにサイエンスデイでは、出展プログラムをお互いに表彰し合うというユニークな表彰の取組『サイエンスデイAWARD』を2011年から行っている。「そもそも“よい”科学・技術とは何か。それは、ひとつの物差しでは計り切れないのではないか」との想いから、サイエンスデイAWARDでは複眼的な視点から評価できるよう、個人・団体を問わず誰でも自分の賞を創設できることとした。出展者側の大学・研究機関、企業や行政機関等のみならず、来場者側の小中高生まで、幅広い立場から年々、賞創設者が増えており、今年は計54賞が創設されている。
 加えて2016年からは、科学を社会に伝える優れた方法論を表彰を通じて可視化・共有化することを目的として、「サイエンスデイ オブ ザ イヤー」を開始し、「JST理事長賞」「宮城県知事賞」「仙台市長賞」「ベストプレゼンター賞」を創設した。2017年からは新たに「文部科学大臣賞」が加わり、次世代を含めた科学の担い手が、科学と社会のよりよい対話方法を模索しようという意識を一層高める効果をもたらした。
 大草氏の熱意と尽力によって、サイエンスデイの出展者並びに来場者、協力者の数は年々増加しており、夏の恒例イベントとして本活動は地域に定着している。また近年は、かつて来場者だった小学生が中高生や大学生になって出展者側となり、自分より歳下の子どもたちに科学を伝えるケースも増えるなど、継続実施の効果が見られるようになっている。特に中高生の出展者のなかには「本活動が年間最大目標行事になっている」と話す者も多く、大草氏の地道な活動が新たな科学教育の場として地域に定着している。
 さらに本活動の波及効果として、仙台市の隣に位置する多賀城市から2016年に「サイエンスデイ in 多賀城」(主催:多賀城市中央公民館)開催の依頼があり、大草氏は2016年から毎年監修者として多賀城市の後方支援も行っている。

3.『学都「仙台・宮城」サイエンスコミュニティ』の設立

 2012年からの3ヵ年は、科学技術振興機構「ネットワーク形成地域型」の採択を受け、これまでの活動をベースに、『学都「仙台・宮城」サイエンスコミュニティ』を設立し、大草氏はコーディネーターとして中心的な役割を担った。本コミュニティは「科学・技術の地産地消」と銘打ち、学都仙台・宮城の資源が教育的価値として地域に還元される循環づくりを地域連携のもと目指すもので、その活動は「科学・技術の地産地消」の「土壌づくり」と「レストラン」の両輪からなる。土壌づくりでは、サイエンスデイを核に、様々な主体による既存活動の効果最大化を図るネットワークの形成により、市民が科学に親しむ文化の醸成を目指し、レストランでは地域資源を活用した科学・技術講座の開発・実施を通じた次世代人材育成を行っている。
 本コミュニティには、主に地元の大学・研究機関、企業や教育機関、行政機関、NPOなど約250団体が参画し、約1万4千人の一般市民が個人で会員登録している(2018年8月現在)。特に、アウトリーチ活動の効率化を目的に開発した地域の科学イベント情報を会員に情報発信し自動的に申込受付ができるWebシステムは大学等から好評を得ており、地域の科学教育情報を集約するプラットフォームとしても大きく貢献している。

 以上のように、大草氏は、組織の枠を超えた新たな地域連携による理科教育の場を創出し、地域の理科教育の発展に大きく貢献してきた。よって同氏の業績は化学教育有功賞に値するものと認められた。

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