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2015年8月23日 

科学講座「光ってそもそもなんだろう?~光の波の性質を理論と実験で理解しよう~」を実施しました

【理論編】数式と物理シミュレーションで波を理解しよう

【実験編】光学実験系を構築してみよう

【実験編】光学実験系を構築してみよう

【事例編】社会で役立つ光技術

【理論編】「数式と物理シミュレーションで波を理解しよう」講義のようす
【実験編】「光学実験系を構築してみよう」光学実験系構築のようす
【実験編】「光学実験系を構築してみよう」単スリットによる回折で生じる暗線の位置を計測し、その計測結果から、未知の光源の波長を計算する参加 者のようす。
【事例編】「社会で役立つ光技術」リコーによるプレゼンテーションのようす

 科学講座「光って、そもそもなんだろう?~光の波の性質を理論と実験で理解しよう~」を8月23日(日)、東北大学西澤潤一記念研究センターを会場にして開催し、中学1年生5人が参加しました。

 本講座は、地域資源を教育的価値に還元する循環づくりを目指す『学都「仙台・宮城」サイエンスコミュニティ』の活動の一環で、地域資源を活用した科学講座の開発・実施を行う「科学・技術の地産地消レストラン」の試行実施(試食会)として開催しました。

 今回のテーマは光ですが、仙台は光に縁のある土地です。仙台が「光通信発祥の地」と呼ばれるのは、今回の会場名となっている西澤潤一先生が、光通信の基本3要素を世界に先駆けて開発したことで、「光通信の父」と呼ばれていることに由来します。光通信やLEDなど、私達の生活に役立つ光ですが、そもそも光とは何でしょうか。

 本講座では、「光って、そもそもなんだろう?」をテーマに、理論と実験の両面から光の持つ波の性質について理解を深める講座内容とし、最後に事例として光技術が社会でどのように役立っているかをつなげる構成としました。

 まず【理論編】では、光とは電磁波、つまり電場と磁場の振動によって伝わる波であることを説明した後、波の振幅・振動数・波長の関係と、波を数式によって表現できることを伝え、重ねあわせの原理や回折現象を、数式と物理シミュレーションで表現しました。三角関数やマクスウェル方程式、波動方程式など、中学生にとっては難しい数式も数多く出てきましたが、各方程式の解を物理シミュレーションによって表現するという直感的な理解も交えながら、光を数式で表現できることの概要を理解してもらいました。

 次に【実験編】では、単スリットによる回折実験を行いました。参加者自ら光学実験系を構築した後、単スリットによる回折で生じる暗線の位置を計測し、その計測結果から、未知の光源の波長を計算しました。今回構築する光学実験系は大学生になるまでなかなか触れる機会のない実験系です。レーザー光線をスリットにうまく導くためには、二枚のミラーを使ってレーザー光線を調整する必要があります。参加者たちは光学実験系構築段階から頭を使って試行錯誤し、光科学・技術の専門家たちからのサポートを受けながら、波長を算出することができました。さらに応用編として、暗線の位置から髪の毛の太さを計算したり、二色のレーザーを重ねるとどうなるかについて、追加実験も行いました。

 続いて【事例編】として、社会で光をどのように役立たせているか、光技術専門である株式会社リコー応用電子研究所の技術者の皆様から事例をご紹介いただきました。宮城県名取市にあるリコー応用電子研究所では、特殊な半導体レーザーを開発しています。同所技術者の三船博庸さんから、自然光とレーザー光の違いや、半導体レーザーが光る原理等について解説いただいた後、半導体レーザーが、光通信やプリンターといった身近な場所で使われていることを紹介いただきました。

 最後に、講師と参加者による懇親会を開催し、フリーディスカッションの場としました。参加者からは「光が数式と関係しているとは思わなかったのでとても驚いた」という感想が非常に多く、光を数式で表現できることを理論と実験の両面から理解してもらうという本講座の目的を達成することができたと思います。また、本講座の内容自体は大学生レベルでしたが、中学1年生の参加者全員から「とても楽しかった」というアンケート結果が得られる等、非常に満足度の高い結果を得ることができました。

 なお、本講座開催にあたり、東北大学マイクロシステム融合研究開発センター様からは会場協力、株式会社リコー応用電子研究所様には講座開発段階から議論にご協力いただき、試行実施当日も講師としてご協力をいただきました。また、日本分光学会東北支部様から光学実験系の機材借用や講座内容に対するアドバイス等のご協力を賜りました。各関係者のご理解・ご協力により、本講座の開発及び試行実施を行うことができましたこと、この場をお借りして感謝申し上げます。

■実施概要

【日時】平成27年8月23日(日)14:00~17:30
【場所】東北大学西澤潤一記念研究センター(仙台市青葉区荒巻字青葉 519-1176)
【主催】特定非営利活動法人 natural science
【共催】東北大学マイクロシステム融合研究開発センター
【協力】株式会社リコー応用電子研究所、日本分光学会東北支部
【対象】やる気のある中高生8名

■講座内容

Experiment14:00~14:50 【理論編】
数式と物理シミュレーションで波を理解しよう
(担当:natural science 遠藤理平)
 1.波を表現しよう
 (振幅、振動数、波長の関係と数式による表現)
 2.平面波を理解しよう(波数の概念)
 3.重ねあわせの原理を理解しよう
 4.ホイヘンスの原理と球面波を理解しよう
 5.回折の一般的表式を導出しよう
 6.単スリットによる回折現象を理解しよう

物理シミュレーション15:00~17:00 【実験編】
光学実験系を構築してみよう
(担当:natural science 大野誠吾)
 1.光学実験系の使い方
 2.平行ビームの作り方
 3.単スリットによる回折実験
  ・既知の波長の光源による暗線幅の計測
  ・暗線幅の計測から未知の光源の波長を見積もろう

17:00~17:30 【事例編】
社会で役立つ光技術
 (担当:リコー応用電子研究所)
 1.企業での光技術応用について
 2.講師と参加者による懇親会(フリーディスカッション)


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