サイエンス・デイ オブ ザ イヤー2018(文部科学大臣賞)受賞企画概要
1.出展プログラム名
さあ、サイエンスの不思議な旅に出発しよう!
2.出展団体名
仙台青少年理科学研究部会
3.構成員名簿(氏名・学年)
氏名 |
役職・学年 |
氏家 妃那 |
岩沼西小学校・6年生 |
小山 紅璃 |
不二が丘小学校・6年生 |
佐藤 紅羽 |
岩沼西小学校・6年生 |
松森 英香 |
愛島小学校・6年生 |
茂木 さくら |
増田小学校・6年生 |
齊藤 玄大 |
不二が丘小学校・6年生 |
佐藤 星斗 |
増田西小学校・6年生 |
益 巴奈佳 |
多賀城中学校・1年生 |
大竹 晴菜 |
名取第二中学校・1年生 |
中澤 香音 |
増田中学校・1年生 |
伊藤 条 |
閖上小中学校・1年生 |
大場 一平 |
南小泉中学校・2年生 |
大場 一花 |
南小泉中学校・3年生 |
佐藤 虹斗 |
名取第二中学校・3年生 |
今野 一弥 |
仙台高専・教授 |
飯藤 將之 |
仙台高専・教授 |
伊師 華江 |
仙台高専・准教授 |
佐藤 徹雄 |
仙台高専・准教授 |
中山 まどか |
仙台高専・准教授 |
濱西 伸治 |
仙台高専・准教授 |
藤田 智己 |
仙台高専・准教授 |
松原 正樹 |
仙台高専・助教 |
4.受賞コメント(約400字)
この度は、大変名誉ある文部科学大臣賞を頂き光栄に思うとともに、心より感謝申し上げます。仙台青少年理科学研究部会は、未来の博士を目指して仙台高専ジュニアドクター育成塾で活動する、小学5年生から中学3年生までのグループです。サイエンス・デイへの出展を目標に、1年間、科学の各分野の実験や勉強を行いながら、興味や理解を深めてきました。今回の出展では、それぞれが関心をもった圧力と流体、光と色、建築と振動の3つのテーマで実験を行い、特に来場者の方とのコミュニケーションを大切にして、同じ目線で楽しく実験に参加していただけるようにアイディアを出し合って実験やポスター作りに取り組んできました。この出展を通して、みんなで一つの目標に向かうことで一人ひとりが思う以上の力を発揮できることや、科学が好きな人が宮城県にはたくさんいることを実感しました。この受賞を励みに、より一層深く科学を学んで行きたいと思います。
5.プログラム紹介文
私たちの身の回りをよく見てみると、実は不思議な現象であふれています。私たち小・中学生の科学大好きグループが、様々な面白い実験をとおして、その謎をみなさんと一緒に解き明かしていきます。3つのブースで繰り広げられる光や圧力、振動などのオムニバス形式の実験に参加して、不思議な科学の現象を体験してみましょう!
6.趣旨・ねらい(どのようなことをねらいとして、出展内容を考えましたか?)
出展のコンセプトとして、演者-来場者の双方向的な対話と、来場者の積極的な参加を2つの柱とする「インタラクティブ型バーチャルラボ」を掲げて出展内容を企画しました。そのうえで、来場者があたかも実験室で実験をしているかのような体験を提供すべく、楽しみながら実験に参加できる空間を設計して、サイエンスの楽しさを小中学生ならではの視線で発信することを目指しました。
7.具体的な出展内容(6.の目的を実現するために、どのような出展内容としましたか?)
7-1.出展内容の設定
私たちは、出展する実験テーマの設定にあたり、前半の半年間で物理、化学、生物、数学、建築に関する実験をオムニバス形式で実施し、各分野の専門知識の蓄積、コミュニケーション能力の育成、理科学的思考法の定着とともに、発表メンバー自身が最も関心のある専門分野を特定することに努め、後半の半年間で3つのグループに分かれ、グループ毎に実験分野(テーマ)とそれに関連する実験内容を決定し、その詳細を検討してきました。サイエンスの楽しさを小中学生の視線で発信するために、実験テーマや実験内容は発表メンバーの意志に任せて決定しました。
7-2.実験テーマ1:圧力と流体の実験内容
① 大気圧の大きさを体感!(大気圧)
容器内の空気を抜き、真空にしたところで来場者に容器を引っ張ってもらい大気圧の大きさを体感できる内容としました。容器には金属球や一途缶などを使用しました。
② 真空砲による大気圧の体感実験(大気圧)
ボールを入れた筒内を真空にし、筒の一端を開放することで他端から大気圧で押されたボールが高速で飛び出す実験を行い、大気圧の大きさを実感できる内容としました。高速でボールが飛びだすため危険を伴いますので、しっかりとした安全管理のもとで実験を行いました。
③ こぼれないコップの水(大気圧・表面張力)
水を入れたコップに金網でフタをすることで、逆さまにしても水がこぼれない現象を観察してもらい、金網の目の大きさとの関係性も考える内容としました。
④ どうして竜巻っておきるの?(流体)
飲み口を上下に繋げた2つのペットボトルの一方に水を入れ、ペットボトル間を移動する水が渦を巻く現象を観察してもらいました。また、ドライアイスを用いて発生させた霧を吸い上げ、アクリルケース内に人工の竜巻も再現し、流体が動く様子を圧力と関連付けて考えさせる内容としました。
これらの「圧力と流体」の実験は、大掛かりな装置を用いた実験内容を中心に据えて、ダイナミックな実験を体感することで来場者に大きな驚きが生まれ、それとともにより実験に興味が抱けるように工夫しました。
7-3.実験テーマ2:光と色の実験内容
⑤ 液晶画面拡大!(光の三原色)
白色の液晶画面の顕微鏡で拡大することで光の三原色の混合が白色光となる様子を観察してもらいました。
⑥ 青空?夕焼け?どっち?(レイリー散乱)
水性ワックスを入れて並べたコップにライトを照射して、青空と夕焼けを同時に再現する実験を行い、青空と夕焼けの原理を考える内容としました。
⑦ 変身レーザー光(励起と発光)
水性蛍光インクの水溶液に青色レーザー光を照射するとインクの色に応じてレーザー光が変色する様子を観察してもらい、光照射下でのインクの分子の励起と発光、さらにはコロイドのチンダル現象についても理解できる内容としました。
⑧ カラフルセロハンテープ(偏光板)
偏光板2枚で作製した筒の観察と、ランダムに貼り付けられたセロハンテープを2枚の偏光板で挟むことで見える万華鏡のような世界を体験してもらい、偏光とは何かについて理解できる内容としました。
⑨ 赤キャベツは何色?(pH指示薬)
赤キャベツから抽出した色素が酸性とアルカリ性で変色する様子を、身近な物を使って何色になるか観察し、それぞれの液性を実際に確かめてもらう実験を行いました。合わせて、光の吸収と見える色についても考える内容としました。
⑩ 1杯でも3色(信号反応)
無色透明容器の中で行われるインジゴカルミンの酸化還元反応について、来場者が実際に手に持って振ることで変化する色の様子を観察し、その原理を学ぶことができる内容としました。
これらの「光と色」の実験は、発光と光の吸収に関連する実験について、来場者がじっくりと実験道具に触れることのできる内容を中心とし、来場者が演者と十分に会話を楽しみながら学べる発表スタイルとしました。
7-4.実験テーマ3:振動(地震)の実験内容
⑪建物模型をゆらして見る
小型地震シミュレーターを用いて、ゆれに強い家の構造を探る実験を行い、どのようなつくりが地震に強いのかその場での実験を通して考える内容としました。
この「振動(地震)」の実験は、来場者がその場で実験データを採取しながら説明を受ける形式とすることで、演者と来場者が一体となった最も臨場感あふれる展示となるように工夫しました。
7-5.文字探しゲーム
来場者の積極的な参加と双方向型の教授法を促進する意味を込めて、各実験を巡って実験の中に隠された文字を探し集める「文字探しゲーム」を取り入れることとしました。
例えば、偏光板を用いたカラフルセロハンテープの実験では、無色透明の板にセロハンテープで文字を描き、偏光板を通したときのみカラフルに文字が浮かびあがるようにしました。また、真空砲の実験では、飛び出すボールに文字を書き、それを当ててもらうことにしました。実際には猛スピードでボールが飛びだすので文字を当てることはできませんが、来場者がより注意して実験を観察し、その威力を体感することを期待しました。文字を集めてくれた来場者には、オリジナルの元素の周期表マグネットをプレゼントしました。
8.出展内容を説明する写真や図(1点以上)
図1.大気圧の大きさを体感する実験
図2.流体の渦を発生させる実験
図3.暗箱内での青空と夕焼けの再現実験
図4.赤キャベツ色素による色の変化の実験
図5.建物模型を使った振動実験
図6.文字探しゲームの例(カラフルセロハンテープ)
図7.発表する実験内容を探索している様子
9.科学を社会に伝えるために、特に工夫していること・意識していることは何ですか?
私たちの出展では、科学の面白さを伝えるために、演者-来場者の双方向的な対話を重視しました。そこで、来場者と同一の視線で寄り添い、演者自身の言葉で実験内容を解説するよう心がけながら、7-2から7-4で述べたように実験テーマごとに発表スタイルを変えることで、来場者が最後まで関心を持ってブース内を楽しめるように工夫しました。その他にも、発表に用いたポスターや実験道具は、来場者の理解を促進するための重要なツールとして試行錯誤しながら作製しました。
ポスターの作製では、まず、各担当実験について演者自身がきちんと理解できたと思うまで書籍や教員を活用して学習し、自分の言葉で説明できるようにしました。その後、来場者が理解しやすいことを念頭に、図に落とし込んだかたちでポスターを作製しました。いずれの発表も、小中学生の学習範囲をはるかに超越した高校から大学レベルの内容を含んでいますが、演者はみな、原理や用語を理解して自分の言葉としてポスターに記述しています。
実験道具については、来場者の理解を手助けすることはもちろんのこと、安全であることを第一に作製しました。例えば、高速でボールが飛び出す真空砲の実験では、実験装置と来場者の間にアクリルパネルを設置したり、暗箱内でレーザー光を使用する実験では、来場者にレーザー光が当たらない位置にレーザーポインターを固定するなどしました。このように、安全に配慮した状態で実験を行っているという姿勢を見せることも、科学に対する理解を深めてもらううえで重要であると考えます。
また、私たちの取り組みにつきましては、「仙台高専ジュニアドクター育成塾」のホームページで公開しており、広く活動を知っていただけるよう努めています。
10.その他、アピールポイントなど、ご自由にご記入ください(自由記入欄)
サイエンス・デイ出展にあたって重視した方針のひとつが、「テーマや実験の選定は発表メンバー自らの意思で行うこと」です。来場者と同じ小中学生の演者が、自身の最も興味・関心のある実験を披露し、なお且つ来場者に「分かった」という気づきを感じさせるように一生懸命説明をすることによって、来場者はサイエンスの楽しさのきっかけを得ることができ、演者は来場者に理解してもらえたことに自信を深め、結果として演者と来場者の双方の学習意欲を同時に高めることができるものと期待しました。このように、演者と来場者が互いに「科学が面白い!」「もっと知りたい!」という思いを共有し、深い学習に繋げていける場を設定することが、私たちの出展の目標としたところです。
このような方針のもと、実験のテーマや実演したい実験内容について、演者各自がアイディアを出し合い、さらにグループ内でディスカッションを繰り返すことで絞り込んでいきました。この際、グループ内のメンバー各々が異なる実験を行うのか、それとも数人1組で実験を行うのかも、各グループの意思に任せました。また、議論の際に教員は、ファシリテーターとしてメンバーの主体性・能動性を引き出す役割を果たすのみで、メンバーによる意思決定を最優先としました。
サイエンス・デイ当日は、発表メンバー各々が実に熱心に活き活きと発表し、来場者と一体となって全体としてブースを大いに盛り上げたと思います。