宮城県米谷工業高等学校は、宮城県登米市にある機械システム科、電気システム科、情報技術科の3学科を設置する専門高校である。
開校は、昭和23年に遡り、校訓「強く正しく明るく」のもと、地域を担う産業人材を数多く輩出して、今年で創立62周年を迎えた。
平成27年4月からは、登米市内の米谷工業高校、上沼高校、米山高校の3高校が統合され、農業、機械、電気、情報技術、商業、福祉の6学科の学校「宮城県登米総合産業高等学校」として生まれ変わり、新しい歴史を刻むことになっている。
社会の有為な形成者として必要な教養や工業に関する技術・技能を身につけるため、元気の良い挨拶と基本的生活習慣の確立に重点を置きながら、教職員が一体となり取り組んでいる米谷工業高校のこれまでの人材育成とその活躍を紹介する。
(1)資格取得に力を入れる3学科
機械システム科、電気システム科、情報技術科とも各学科の特徴を生かした資格取得に取り組んでおり、年々その合格率は向上している。
特に、電気システム科の電気工事士の試験では、第二種の合格者が32名の卒業生中28名、第一種の合格者が9名もいるなど、これまでの継続した指導が大きく花開いている。
(2)地域貢献の取り組み
米谷工業高校の特色は、ボランティア活動にも表れている。そのひとつに身につけた工業の知識、技術・技能を、地域社会に還元し、地域社会に貢献しようという「テクノボランティア」がある。
始まりは、本校の特色の学科であった自動車科(平成24年度で閉科)が行っていた地域住民の自家用車の日常点検であり、日頃の支援に感謝してのことであった。
現在は、機械システム科が溶接技術を活用した長椅子を製作し、地域の集会所に寄付している。電気システム科は、地域住民宅を訪問し照明器具の清掃・点検、スイッチの交換、漏電検査等を行っている。情報技術科は、地域の小学生を対象としたレゴロボットのプログラミング教室を開催している。
地域に支えられている学校として、地域に感謝の気持ちを伝え、また地域からも感謝されるという好循環が、学校の教育活動全体を活気づけている。
(3)ロボット競技大会での活躍
平成26年11月 宮城県で開催された全国ロボット競技大会において、米谷工業高校のチームは、3回戦に勝ち進み全国ベスト16となった。
3年前から全国大会への出場を果たしてはいたが、今年度は県予選を初優勝しての出場であり、選手ばかりでなく学校全体が熱気に包まれていた。
今回の活躍の立役者となった生徒達は、さらに深く知識、技術を身につけたいと熱い眼差しで話してくれた。
米谷工業高校最後の校長となった三浦校長から、これまでの歴史と今後への期待・抱負を語ってもらった。
宮城県米谷工業高等学校は、地域の皆様の期待を受け、その期待に答えるべく、社会の変化に対応できる知識・技術を備え、創造力にみちあふれる実践的な工業技術者の育成に、一貫して取り組んできました。
本校卒業生が日本の高度経済成長を支え、発展させ、また、地域経済を支え、地域に活力を与えてきたことは間違いのないことです。
本来「ものづくり」とは、自分のために行われるものではなく、人のために行われるべきであり、自分のための「ものづくり」では、妥協や完成度の追求不足が発生しやすいが、人のための「ものづくり」では、使用する人のことを思い、考えることにより、より良いものを目指そうとする意識が芽生えます。
この働きを利用して、将来製造業で働くことを目指す生徒に、「ものづくり」の本来あるべき姿を学習する機会を多く与えてきました。
本校は、平成27年3月、開校から62年という歴史に幕を閉じ、4月からは宮城県登米総合産業高等学校として新たなスタートを切ります。
学校が閉じられることは、悲しく寂しいことではありますが、本校の人材育成の精神は、登米総合産業高等学校に引き継がれ、さらに輝きを増してくれるものと確信しています。