「テラヘルツ光」などを研究している理化学研究所仙台地区(仙台市青葉区)の一般公開「杜の都にあがる、不思議な光」が8月3日、行われ、親子連れら約490人が光の科学を楽しんだ。
テラヘルツ光とは、電波と光のちょうど中間の周波数(0.1~10テラヘルツ ※テラは一兆)の電磁波で、電波と光の両方の性質を兼ね備える。一般公開では、そのユニークな性質から「未来の光」として注目されるテラヘルツ光を体験できるイベントや、光の性質を利用した実験や工作教室などが行われた。
「テラヘルツ光で透視しよう!」コーナーでは、箱の内部にある物体をテラヘルツ光で透視する実験が行われた。テラヘルツ光は、電波のように、プラスチックや紙などはよく透過し、金属や水分が含まれているものは透過しない。また、電波より波長が短いため、画像化に必要十分な空間分解能がある。被爆の恐れがないため、X線に次ぐ透視法として、空港の所持品検査などへの応用が検討されている。
「体感しよう、テラヘルツ光!」コーナーでは、独自の技術を用いて発生させたテラヘルツ光を、種類の異なる気体が入った風船に当てて、テラヘルツ光が通るか・通らないか、比較する実験が行われた。テラヘルツ光は、大半の物質を透過するが、物質ごとに吸収や反射の程度が異なる。そのため、さまざまな周波数のテラヘルツ光を当て、周波数ごとの吸収の分布(スペクトル)を見ることで指紋のように物質の種類を見分けることができる。
このほか、光ファイバーは光がガラス内部を全反射を繰り返しながら進むことを利用した技術であることや、青空や夕焼けのような空の色の違いは光の散乱現象によって説明できることを、簡単な実験装置を使って再現するコーナーなどがあった。偏光板やセロハンテープなどを使って万華鏡をつくる工作教室もあり、親子連れらが光の科学を楽しんだ。
テラヘルツ光研究グループディレクターの大谷知行さんは「科学は、一見難しそうに見えるが、素朴な疑問から始まり、手を動かしながら、当たり前のことをたくさん積み上げているだけで、特別なことではない。研究は、大変で時間もかかるが、一番大切で必要なことは、ワクワクする心。科学のおもしろさを、ぜひ感じてもらいたい」と話している。