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2015年2月14日 特定非営利活動法人natural science

【実施報告】科学技術の地産・地消レストランの試食会(試行実施)「知的好奇心駆動型 新感覚学習ゲーム物理クエストI」

【写真1】個々に自分の課題を設定して学ぶ物理クエストのスタイル
【写真2】物理クエストの導入でルール説明をしている様子
【写真3】クエストを選んでいる受講生
【写真4】電子工作に取り組む受講生
【写真5】プログラミングに取り組む受講生
【写真6】物理学(座学)に取り組む受講生
【写真7】中学生が小学生に教えてもらっている様子
【写真8】一番経験値を上げることのできた受講生に個人賞の授与式
【写真9】講座後の達成感にあふれる受講生たち

【写真1】個々に自分の課題を設定して学ぶ物理クエストのスタイル
【写真2】物理クエストの導入でルール説明をしている様子
【写真3】クエストを選んでいる受講生
【写真4】電子工作に取り組む受講生
【写真5】プログラミングに取り組む受講生
【写真6】物理学(座学)に取り組む受講生
【写真7】中学生が小学生に教えてもらっている様子
【写真8】一番経験値を上げることのできた受講生に個人賞の授与式
【写真9】講座後の達成感にあふれる受講生たち

「科学・技術の地産地消レストラン」シェフ 青木さくら(東北大学理学部物理学科2年)

 学都「仙台・宮城」サイエンスコミュニティでは、「科学・技術の地産地消レストラン」と銘打ち、様々な地域リソースを活用した科学講座を開発・実施することで、地域の知的資源が次世代育成に還元される循環をつくることを目指しています。この「科学・技術の地産地消レストラン」のシェフとして今回私が開発・実施した講座について報告します。

 私は、現状の教育を受けてきて、勉強は教えてもらって受け身でやるものだというように思っている学生や、問題と答えが決まっていてそれを覚えることが勉強だと思っている学生が多いことが気になっていました。そこで、楽しく学べる形式で、学びたい、もっと力をつけたいというモチベーションを高めることができれば、このような問題が解決すると思い、ゲーム形式の講座でゲームを進めながら自学自習スタイルで能動的に物理学を学ぶことのできる物理クエストという講座を開発しました。

 物理クエストは、単にテストの点が取れるだけでなく、自分に科学的思考力が身についていく実感が持てるようなゲーム形式の講座です。本来、物理学を理解するには、現象のモデル化、定式化、実験系の構築や解析が必須ですが、高校の授業では、あらかじめ用意されている実験や教科書を覚えてテストを受けるだけになっています。物理クエストでは、クエストというお題を解きながら物理ワールドを冒険するというスタイルで、上記必須項目をゲーム感覚で身につけられるようになっています。

 物理クエストは一回4時間で行い、月1回程度開催され、何度でも参加できるものとなっています。また、ゲームを進めるうえで毎回突破しないと進めない通過点を設け、復習を助長するスタイルとなっています。物理クエストの第一弾として今回は物理クエストIというタイトルで行いました。

実施日時:2/14(土) 13:00-17:00
参加者:小学生3人、中学生4人
募集概要はこちら

 入場クエストという物理ワールドへの入り口の門があり、今回の受講生はまずそれを突破するのに挑んでいました。入場クエストは電子工作の門、プログラミングの門、物理学の門の3つがあり、1時間に1回、全部で4回ほど行いました。
 受講生は主に、入場クエストが解けるように知識や技術をつける浪人クエストというものに取り組んでいました。電子工作に取り組んでいたのが4人(小学生2人、中学生2人)、プログラミングが1人(小学生)、物理学が2人(中学生2人)でした。

 今回の受講生で入場クエストを突破できたのは二人。まずはじめに入場クエストを突破したのは最年少の小学3年生で、3回目の入場クエスト電子工作の門を突破しました。次に突破したのはまだ学校では習っていない物理学にずっと取り組んでいた中学生で、4回目の入場クエストで物理学の門をやっと通過し、嬉しそうでした。

 電子工作が得意な中学生が「自分は電子工作だったらゲームをどんどん進められると思うが、せっかくだから今日は物理学にチャレンジしたい」と言って果敢に取り組んでいる様子や、電子工作が初めての中学生が「自分は電子工作をやったことがないから、基本的なところを繰り返しやる」と言ってはじめひたすらはんだ付けをしていた様子などから、自分で課題を設定し、それを自分で進んで学んで行けるシステムになっていて、またそれがきちんとサイクルとしてうまく機能していたので良かったと思いました。電子工作が初めての受講生も、講座が終わる頃にははんだ付けがとても上手になっていました。
 また、電子工作が初めての中学生が、電子工作が得意な小学生に、教えてくれと頼んでいる様子からは、例え年下からであっても学びたいという意欲が感じられ感動しました。いつの間にか受講生同士で互いの能力を認め合って、自然に教え合うようになっていました。学びたいというモチベーションがゲーム形式により能動的に機能していると思われました。

 一方で、今回の実施により物理クエストはまだまだ改善できる点がたくさんあると感じました。まず一番大きいのは、分からないことがあったとき、教えあう以外の方法でどう勉強したら理解できるようになるかが明示的に示せていませんでした。実際、受講生同士で教えあっても分からない事柄について、テキストのどこを調べればいいのかが分からないという状態が発生していました。今回は講師がヒントを与えるという形をとりましたが、これについてはクエストごとに、そのクエストの内容を理解するためのキーワードを明示するという形にすることで、分からないことを積極的に調べるのを促すことができるのではないかと考えています。
他にも、ゲームのシステムや演出でもっと改善できると思うところが多数あったので、次回の実施までにより受講生がのめり込めるようなゲーム形式にしようと思います。

 参加した受講生から取ったアンケートでは、今日来て成長したと思うか、次回も来てやりたいかという質問に対し、全員から「はい」という回答をもらうことができました。また、「RPGっぽい進め方で楽しくできた。」「ゲーム感覚でできたので、授業でやるよりも楽しくできた。」「学べることがたくさんあって充実した時間が過ごせた。」「教えてもらうだけじゃ覚えられないと思っていた。自分で考えることで脳が活性化するのでこのゲーム形式は良かった。」などの声があり、今回の講座を受講生に満足してもらうことができました。

 最後に、科学・技術の地産地消レストランのシェフとして、自分が受けられなかった教育、受けたかった教育を開発・実施するという経験は、自分にとっても大きいものでした。現状の教育は何が問題なのか、いかにしてその問題を克服するか、といったことを考えることで自分自身も力がついたと思います。
また、実験的な面と数値的な面と解析的な面という多方面から物理を学ぶ講座を大学生の自分が作れたのは、一緒に開発した他の講師とのチームワークがなければ実現できませんでした。
自分の意図通り、受講生に能動的に学ぶのを身に付けてもらうこと、またそれを楽しいと思ってもらうことができて、非常に嬉しく思います。次回実施までに今回得られた改善点を改善し、より良い講座にしてまた提供したいと思います。

公開:2015.02.27 科学講座レポート
文責:青木さくら

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