【写真1】24日に開催された水産総合研究センター東北区水産研究所一般公開のようす=宮城県塩釜市[/caption] 水産研究を身近に感じてもらおうと、水産総合研究センター東北区水産研究所(宮城県塩釜市)は8月24日、塩釜庁舎や調査船を一般公開した。
日本は四方を海に囲まれ、魚介類をよく食べる国。同研究所では、それら水産資源を守り、増やすための研究や、皆が安心して利用するための研究を行っている。特に東北区では、黒潮と親潮が交じり合う海域で、海洋環境の特徴や水産資源変動のしくみなどが調査研究されている。
一般公開では、約630人の家族連れらが訪れ、海のプランクトンを観察したり、ヒトデなど海の生き物にじかに触れる体験などを通じて、水産研究に対する理解を深めていた。
そこで、問題。「氷を入れると、AとB、どちらが先に氷が溶けるでしょう?」「氷が溶けた時、コップの中のコーヒーの色は、どうなるでしょう? ①均一になる、②冷たい水が下になる、③冷たい水が上になる」。
この理由について研究者は「水の重さを決める一つに温度があり、冷たい水ほど重い。Aは、氷で冷えた重い水が下になろうとするので、混ざりやすい。一方でBは、氷で冷えた水より砂糖が溶けている水の方が重いため、混ざりにくく、下から上へ熱が伝わりづらいので、氷は溶けにくい」と解説。軽い水と重い水が接した時、軽い水が上に、重い水が下になろうとして、流れ(密度流)が発生するしくみが説明された。
続いて「塩分でも同じです」と、海水と河川水が混じる汽水域を模した密度流の実験が行われた。まず、真ん中を仕切りで区切った水槽に、赤と青に着色した同密度の水道水を片方ずつ入れ、仕切りを外した。その結果、水はほとんど混ざらなかった。その理由は「密度差で生じる流れがなく、接面の分子拡散だけだから」と解説された。
実際に、仙台港でも阿武隈川から供給される河川水(軽い)が、川の流れの勢いでなく密度の違いで、海水(重い)の上に広がっていることが観測されているという。ただし、河川水はどこまでも広がるわけではなく、地球自転の影響で力学的にバランスするため、ある程度までしか広がらないことも説明された。
同所では、2007年9月に日本で初めて水中グライダーを導入。2011年3月の東日本大震災で被害を受けた調査船復旧までの間、国内最長記録となる70日間、水中グライダーによる長期観測を行っている。
このほか、イカ墨習字や海藻しおりづくりなどの工作体験コーナーや、調査船員による魚の解剖実演やさばき方実演コーナーなどがあり、子どもたちの人気を集めていた。また、マリンピア松島水族館と連携したドクターフィッシュやクラゲの展示もあった(写真6,7)。
同所長の平井光行さんは、「東日本大震災で大きな被害を受けた東北地方の水産業は、復興に向けて頑張っている。微力だが我々も復興に役立ちたい思いで、一丸となり頑張っている。私たちの行っている調査研究を理解していただけたら有難い」と話している。