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2016年1月20日 

学都「仙台・宮城」サイエンスコミュニティ総まとめフォーラム「科学・技術の地産地消への夢と理想そして現実を語り合う会」を開催しました(1月20日)

写真1 学都仙台・宮城サイエンスコミュニティの事業概要と成果報告、今後の計画について(大草芳江コーディネーター)

写真1 学都仙台・宮城サイエンスコミュニティの事業概要と成果報告、今後の計画について(大草芳江コーディネーター)
 学都「仙台・宮城」サイエンスコミュニティは、「科学・技術の地産地消」をコンセプトに、地域資源が教育的価値として地域に還元される循環づくりを目指しています。平成25年度にJSTから「ネットワーク形成地域型」の採択を受け最終年度を迎える今年度、総まとめフォーラムとして、「科学・技術の地産地消」にむけて夢と理想、そして現実をざっくばらんに語り合う会を、1月20日、東北大学カタールサイエンスキャンパスホールを会場にお借りして開催しました。


写真 2 第一部「科学・技術の地産地消にむけて夢と理想、そして現実を語り合う会」ライトニングトークのようす

写真 2 第一部「科学・技術の地産地消にむけて夢と理想、そして現実を語り合う会」ライトニングトークのようす
 第一部のライトニングトークでは、まず当該事業のコーディネーターを務める大草芳江(特定非営利活動法人 natural science)が事業概要と成果報告、今後の計画について発表した後、「『科学・技術の地産地消』への夢と理想、そして現実」をテーマに、本コミュニティに関わる多様な立場の方(合計24名)から、それぞれの方の視点で最も大切だと思うことを、お一人3分間ずつのライトニングトーク形式でお話いただきました。また、ご参加いただいた方からもコメントをいただきました。


写真 3 第二部「科学と社会」意見交換・交流会のようす

写真 3 第二部「科学と社会」意見交換・交流会のようす
 続けて、第二部の「科学と社会」意見交換会・交流会では、第一部で皆さまからご提供いただいた話題をもとに、宮城の日本酒を交えながら、ざっくばらんにご議論いただきました。
 JSTの支援は今年度で終了となりますが、次なる「科学・技術の地産地消」のステップへむけて、多種多様な立場の方との相互理解を進めることができたものと思います。今後とも、皆さまからのご理解とお力添えを賜りますよう、引き続き宜しくお願い申し上げます。


実施概要

1.名称 学都「仙台・宮城」サイエンスコミュニティ 総まとめフォーラム~
「科学・技術の地産地消」への夢と理想そして現実を語り合う会~
2.日時 平成28年1月20日(水)16:00~17:30(懇親会~19:00
3.会場 東北大学カタールサイエンスキャンパスホール(QSCホール)
仙台市青葉区荒巻字青葉6-6 東北大学青葉山キャンパス 工学部管理棟1F
4.費用 お一人2,000円(交流会実費として:宮城の日本酒をご用意致します
5.備考 本事業は、JST「ネットワーク形成地域型」(平成25年度採択事業)の平成27年度『「科学と社会」意見交換・交流会』として開催致します。
6.次第 16:00~16:15 事業概要・成果報告(大草コーディネーター)
16:15~17:30 ライトニングトーク(LT:お一人3分間ずつ)
17:30~19:00 「科学と社会」意見交換・交流会

ライトニングトーク発表者リスト(敬称略)

運営委員会

委員長 内田 龍男 国立高等専門学校機構理事、仙台高等専門学校 校長
委 員 石井 鉄雄 仙台市科学館 館長) ※忌引のため欠席
委 員 小田 浩一 宮城県高等学校理科研究会 会長
委 員 山口 健 東北大学大学院工学研究科創造工学センター副センター長
委 員 進藤 秀夫 東北大学 理事(産学連携担当)
委 員 土佐 誠 仙台市天文台 館長 ※海外出張中のためビデオでの参加
委 員 宮川 耕一 宮城県経済商工観光部 次長
委 員 西山 英作 一般社団法人 東北経済連合会 産業経済部長
委 員 松田 宏雄 産業技術総合研究所 東北センター 所長

外部有識者

委 員 宮原 育子 宮城大学事業構想学部 教授
委 員 渡邊 幸雄 宮城県仙台第二高等学校 校長、宮城県高等学校長協会 会長
委 員 山城 巌 株式会社東栄科学産業 最高顧問、みやぎ工業会 副理事長
委 員 野家 啓一 東北大学 総長特命教授

大学関係者

江刺 正喜 東北大学 マイクロシステム融合研究開発センター センター長
村松 淳司 東北大学 多元物質科学研究所 所長
山口 隆美 特定非営利活動法人 REDEEM 代表理事、
東北大学 大学院医工学研究科 医工学専攻 特任教授
吉澤 誠 東北大学 総長特別補佐(社会連携担当)
渡邉 浩文 東北工業大学 工学部建築学科 教授、工学部長
佐藤 明 東北工業大学COC(文部科学省「地(知)の拠点」)推進室プロデューサー

学会関係者

吉澤 雅幸 日本分光学会東北支部長、日本物理学会東北支部長、東北大学大学院理学研究科物理学専攻 教授
末光 眞希 応用物理学会東北支部長、東北大学 電気通信研究所 教授

東北経済産業局

岩瀬 恵一 東北経済産業局 地域経済部長

科学技術振興機構(JST)

柴田 孝博 JST 科学コミュニケーションセンター事務局長

企業関係者

佐藤 伸一 株式会社日立ソリューションズ東日本

ライトニングトーク発表内容(概要)

(1)運営委員長 内田龍男さん(国立高等専門学校機構理事、仙台高等専門学校校長)


 学都仙台には大学も学生も多いが、これまで連携してサイエンスをどうするかはやられてきたことがない。素晴らしい構想でこの組織を立ち上げたナチュラルサイエンスに敬意を申し上げる。この機会に、そもそもサイエンスとは何だろうと考えたい。戦後の日本はサイエンスとは程遠い状況にあり、女性が家事をするのを大変だと思って見ていたが、今では家庭の中がほぼ電化されるほど進歩し、サイエンスが人々の役立つことをしみじみと感じている。今後もサイエンスをプラスに活かしていくべきと思う。もう一方では、サイエンスに対する興味もサイエンスの根底にある。その両方をセットにしながら次の時代もさらに発展していければと思う。これからの時代、今の仕事の半分は無くなると言われている。すべてが人工知能化・自動化される時代、人間はやることがなくなるのか、もっとやることが増えるのか。その境目が我々自身の発想だと思う。皆様とともに、次の時代に向けて素晴らしいものをぜひつくっていきたい。

(3)運営委員 小田浩一さん(宮城県高等学校理科研究会会長)


宮城県高校理科研究会とは、高校理科教員による自主的な研究会で、宮城県の全高校に会員がいる。高校は基礎的な知識を系統的に教える場だが、自ら勉強をするというより、強いて勉強させられる場。しかし、これからはそれだけではやっていけない。強いて勉強させられるのではなく自ら学べと、高校でも盛んに言っている。その切り口として、サイエンスはとても大切だ。「科学・技術の地産地消」の根本には人材育成がある。高校だけでなく小中学校、地域を結びつけるこのような活動は大切。引き続き私もこの活動に参加し一緒にやっていきたい。


(4)運営委員 山口健さん(東北大学大学院工学研究科創造工学センター副センター長)


東北大学カタールサイエンスキャンパスは、宮城県の小学生、中学生、高校生を対象に、東北大学大学院工学研究科・工学部がものづくりや科学実験に関連するイベントを行うプロジェクトである。発足当時から、 natural science と連携して、プログラム策定の他、サイエンスコミュニティのWEBシステムで、イベント告知から名簿管理まで行っている。このシステムは、急な変更があった場合も、参加者にメール通知して連絡できて、便利である。イベント告知から名簿管理まで一手にできるWEBシステムができたことは非常に大きく、我々も最も助かっている。


(5)運営委員 進藤秀夫さん(東北大学産学連携担当理事)


サイエンスコミュニティの活動は、人々を科学方向に動機付けしていく点でも大切で、かつ地域の人々が絡み合って資源を融通し合い共有化している意味でも良い。私の専門は、システム科学のため、このシステムが自立・持続するかに関心がある。その視点で見ると、特に土壌づくりでは、一時的なイベントに終わらせない仕組みとして、告知ネットワークの構築や宮城県各地に拡大した点は大変良かった。また、レストランの方は、iCAN(国際ナノ・マイクロアプリケーションコンテスト)やものづくりと絡めて、実際に魅力的な形で動かしていくことができ、一コマ2,000円、4,000円で受益者負担による提供を一部開始できた。今後の活動については、第一に、補助金が無いところでさらなる経済的自立ができるかに興味があり、次の課題である。第二に、サイエンスデイは手弁当でやることでき、県下に拡大した時は自治体の協力もあってできた。一方で科学講座は育成ステップも増えており、重たいシステムになっている。科学講座を支える大学生は十数名育てても卒業するため、継続的な育成が大事である。第三に、「科学・技術の地産地消」というコンセプトについて、「地産」とはいうものの実際には全体として割と基礎的な技術や科学を教えている。それを、東北の技術(地産)から本当に教えられるのか、概念的考察としてやってみるとおもしろいと思う。その意味では、「学都仙台・宮城サイエンスマップ光編」はおもしろい取り組みで、次はこの辺りを掘り下げていかれるとよいと思う。


(6)運営委員 土佐誠さん(仙台市天文台館長) ※海外出張中のためビデオでの参加


当該事業は野心的な企画であったが、3年間で想定を超える成果を挙げ無事満期を迎えたこと、大変高く評価している。非常に試行錯誤があったと思うが、そこから学ぶこともたくさんあり、活動によく活かされたと思っている。コミュニティ形成と人材育成は両方つながっている。ネットワークを拡げながら、科学に興味を持つ人材を育成し、その人の成長が、次の世代の科学に興味を持つ若者を育てる活動につながる、そんな循環ができることがひとつの大きな目標である。今後も今回の成果を活かして、次の人材育成とともに、またその次の人材育成につながるような構想を続けていただきたい。今後の活動に期待している。


(7)運営委員 宮川耕一さん(宮城県経済商工観光部 次長)


県の問題意識のひとつは産業人材の育成。県内に企業立地が進む中で人材が定着しない、あるいは人材の数が足りない、さらにそこから裾野を広げ、中小企業がイノベーションを起こしていく人材がまだまだ不足している現状がある。その中でこの事業に期待しており、これからもぜひ続けてもらいたい。県としても、県内の人材定着を図るために、仙台高専に協力いただき、地方創生の予算で学生を県内企業の活動に参加いただく事業を行っており、ぜひ続けていきたい。この3年間で、サイエンスコミュニティの循環型の人材育成の仕組みはやっと一周りし、それが各地域に拡がってきた。今後の課題はふたつあると思う。ひとつ目はまだ皆でエネルギーをかけてまわしているが、自律的にまわりだす転化をしていくこと。ふたつ目は、まだまだ限られた方の参加であるのが現状なため、裾野を広げ、さらに太い輪にしていくこと。県としても引き続き一緒に取り組んでいきたい。


(8)運営委員 西山英作さん(一般社団法人東北経済連合会産業経済部長)


東経連が事務局を務める東北ILC推進協議会で、国際リニアコライダー(ILC)の誘致に取り組んでいる。ILCは素粒子物理学の実験施設で、1兆円規模のプロジェクト。ILCの国内建設候補地が北上山地に決定している。一兆円の装置をつくるのに、東北の企業はほとんど関係できないと言われた。しかし我々が調べてみると、680社くらい関係できそうな企業が東北にあった。ILCと同様の施設であるスイスのCERNには、年間約20万人が訪れ、サイエンスツーリズムが行われている。今後、サイエンスコミュニティの人材育成をベースにして、サイエンスツーリズムをプロモーションしていくこともできると思う。ぜひ我々との取組みとも連携できればと思う。


(9)運営委員 松田宏雄さん(産業技術総合研究所東北センター所長)


我々産業技術総合研究所の使命は、産総研の技術シーズをもとに企業と連携して産業を地域に興していくこと。サイエンスコミュニティの科学・技術人材育成は頼りになる活動で、このような活動を私どもの研究所職員にも真似をさせたいと思っているところである。小・中学生を対象とした人材育成に目が向きがちだが、少し視点を変えると、宮城県の企業や東北大学をはじめとする研究機関、学校等が一堂に会して、お互いに知る機会を皆でつくっている良い機会である。これを途絶えること無くつなげて、ここにいる人たち一緒にぜひ活動を続けていきたい。


(10)外部評価委員 宮原育子さん(宮城大学事業構想学部 教授)


地域資源を活かした観光交流のあり方を研究している。今日はサイエンスのこれからの考え方について話したい。震災から5年。地震や津波など自然現象に対する関心や報道等は減り、むしろ復興の遅れなど人間社会の中での不都合への関心が高くなっている。一方で私は、自然が引き起こした色々なことがどうしてずっと人間社会の中でつながらないかを考えた。それは、私たちの学校教育や大学での研究、家庭の暮らしが、自然と離れて、閉じているからだと思う。昔の人達が注意深く見ていた自然の恵みやその中での暮らしを、科学する心の方まで持っていきたい。自然とつながるようなコミュニティのプログラムをぜひつくってほしい。それを続けていただくことが、震災に遭った私たち東北のひとつの目標になると思う。


(11)外部評価委員 渡邊幸雄さん(宮城県仙台第二高等学校校長、宮城県高等学校長協会会長)


地域資源を活かした観光交流のあり方を研究している。今日はサイエンスのこれからの考え方について話したい。震災から5年。地震や津波など自然現象に対する関心や報道等は減り、むしろ復興の遅れなど人間社会の中での不都合への関心が高くなっている。一方で私は、自然が引き起こした色々なことがどうしてずっと人間社会の中でつながらないかを考えた。それは、私たちの学校教育や大学での研究、家庭の暮らしが、自然と離れて、閉じているからだと思う。昔の人達が注意深く見ていた自然の恵みやその中での暮らしを、科学する心の方まで持っていきたい。自然とつながるようなコミュニティのプログラムをぜひつくってほしい。それを続けていただくことが、震災に遭った私たち東北のひとつの目標になると思う。


(12)外部評価委員 山城巌さん(株式会社東栄科学産業最高顧問、みやぎ工業会副理事長)


※本日出張のため、代理出席で大村勝則さん
科学測定機器を仕事で扱っていることを活かして、子どもたちに何か貢献できないかと思い、サイエンスデイに参加したり、日本電子と一緒に電子顕微鏡の出前授業を被災地等で行っている。我々も楽しみながら、科学測定機器を通じて、子どもたちに科学に対する興味を持ってもらう活動を、今後もぜひ継続していきたい。


(13)外部評価委員 野家啓一さん(東北大学 総長特命教授)


私の専門は、科学哲学や科学技術社会論(STS)。先日テレビで、「セルロースナノファイバー(CNF)」という新素材が紹介されていた。紙パルプから鉄より強い材料がつくられるという、大変な発明だと思った。その開発に関わっている先生が一本の木を見上げて、「この一本の木が自動車一台になる」と仰っていた。もちろんそれは技術の素晴らしさを紹介したものだが、私の頭には「日本の国土7割を占める森林が、すべてセルロースナノファイバーの開発に使われたら、日本中の山がハゲ山になりかねない。新しい技術の開発は実に素晴らしいことであるが、同時に植林を進め林業を育成しなければ、とんでもないことになる」との思いがよぎった。つまり、科学・技術の開発は社会のあり方と密接に関わっているため、その調和を取れなければ、我々の未来をきちんと描くことはできない。
最後に、私のナチュラルサイエンスへの最大の貢献は、私が東北大学の広報担当理事の時、大草さんが訪ねてきた。サイエンスデイの会場に東北大学を使いたいけど、費用が高すぎるので、ディスカウントして欲しいと。その年から東北大学と共催になりキャンパスを無料で使えるようになった。それが私の唯一の貢献で最大の貢献だと思っている。これからのご発展をお祈りしている。


(14)江刺正喜さん(東北大学 マイクロシステム融合研究開発センター センター長)


半導体の技術を応用してセンサや部品をつくる「MEMS」を学生時代から研究している。現在は、青葉台にある西澤潤一記念研究センター(旧半導体研究所)にいる。費用をかけずに成果をあげ役立つ工夫について、ポイントを話す。
大学の時、会社の人たちが多く来ていた。いつも10社くらいの人がいて、学生に良い影響を与えた。いつも会社の人達に私は「自分で大学に来て自分でやってください」と言っていた。アウトソーシングすると、空っぽになっちゃうから。現在、西澤センターでは昔のトーキンの工場を移して活用し、半導体工場を持っている。そこに150社くらいの会社の人たちが来て試作している。旧半導体研究所で働いていた人を今も8人雇用しているため、人件費等で1億7千万円程の支出があるが、そのうち1億1千5百万円を売上金(使用料)で賄い、できるだけ自立運営をしている。また、ニーズに応えて何でもやることで自分を成長させるのが大切。私の分野はバイオからコンピュータ等ずっと変わってきた。私は「試験がないと勉強しない」と言っているが、分野が変わるたびにちょうどよい機会だと思って勉強するのが良い。そして、設備を共有するのがとても大事。ある程度、ものつくって完成度を高めないと、産学連携といえども、産業に技術を移転できない。そのために色々な設備が必要なため、その点に非常にこだわってきた。それと、アクセスしやすい情報管理。私はものの整理が趣味で、整理してエクセルにまとめて、そのファイルを大草さんや隣の理化学研究所にもあげている。今後ともよろしくお願いします。


(15)村松淳司さん(東北大学 多元物質科学研究所 所長)


※本日海外出張のため、代理出席で副所長の福山博之さん
多元物質科学研究所は、工学だけでなく理学研究や生命科学研究、環境科学等と非常に多岐にわたって研究をしている。このほか、地元企業と密着した研究や産学官連携の交流イベント、地元の小中学生向けサイエンスコミュニケーション等の活動を積極的に行っている。今後ともよろしくお願い致します。


(16)山口隆美さん(特定非営利活動法人 REDEEM 代表理事、東北大学大学院医工学研究科 医工学専攻 特任教授)


REDEEMは、医工連携のための基礎教育を行うNPOで、エンジニアに生命科学の基本を教えている。エンジニアは生物学を学んでこないので、生物が何かわからないと、医療従事者と話が通じず、開発ができないためである。15年間活動するうちにだんだん発展し、中高の理科教員や高校生、東北大学の医工学研究科にも対象が拡がり、最近これらを全部融合した教育「トランスグレード教育」を提案している。学年や学科、学校にこだわらず、しかも若い人が若い人に教える、大学生が高校生に教える、社会人が大学生に教える、というのを全部融合した教育をやったらどうかと、川内で開始した。具体的には発生生物学で、うずらの卵を目の前で見るのと、見るための顕微鏡を自分でつくるプロジェクトを、中高生、先生、学部学生や社会人をごちゃまぜにして、その中でお互いに話が通じて概念を共有できる、既存の枠をとっぱらった教育のもとになると思っている。


(17)吉澤誠さん(東北大学 総長特別補佐(社会連携担当))


東北大学サイエンスカフェのコーディネーターを務めている。サイエンスカフェは一方通行の講演ではなく、市民と同じ目線で同じテーブルを囲み、科学に対する知識を得たり議論をするもの。せんだいメディアテーク等を会場にして約月1回、金曜日の夜に、約2時間実施している。講師は、東北大学の広報課や教員、学外のメンバーで構成するワーキンググループで選定する。レギュラーバージョンの他に、時々、スペシャルバージョンも行う。学生ボランティアの支援も受けているが、学生主体のイベントも時々実施しており、学生教育の一環として優れていると思う。また文系では、リベラルアーツサロンも実施。サイエンスカフェ参加者は、壮年者の方が比較的多い。課題としては、テーマ選びに毎回工夫が必要であることだ。また、ファシリテーターがいなければ、うまくまわらない。講師にも大学の講義とは違う、おもしろい話をしてもらい、聴衆にも協力してもらわないとまわらない。その相乗効果が生まれると、サイエンスカフェはうまくまわると感じている。


(18)渡邉浩文さん(東北工業大学工学部建築学科教授、工学部長)


東北工業大学は昨年度からサイエンスデイに参加している。本日は私の私見を述べる。「科学・技術の地産地消」ということで、土壌づくりとレストラン、人材育成の視点から非常にうまくやっている。特に、サイエンスデイで小中学生が目を輝かせながら楽しんで取り組んでいる姿に大変感動した。大草さんから、「アイディアを形に」をキーフレーズに、地元の大学や企業を巻き込みたいとの話があった。しかし、よくよく考えてみると、私も一研究者の立場からすると、大学生・大学院生がそちらの活動にあまり熱心になってもらっても困る。また企業も、事業化や商品化が見えないと、なかなか腰が入らないであろう。とすると、小中学生が目を輝かせながら楽しんでいるこの活動母体をベースに考えると、もうワンステップ必要ではないか。そこで私が思ったのは、日本で今、最も時間ポテンシャルが高いと言われている、退職技術者や意欲的なシニアの方々を巻き込むような仕組みをつくるのは如何だろうか。楽しくやりつつ、でも、ものになりそうなものが見えてきたら、きっと黙ってても皆乗ってくると思うので、そんなワンクッションを置くことで、うまく楽しい仕組みができるのではないかと思う。


(19)佐藤明さん(東北工業大学COC(「地(知)の拠点」)推進室プロデューサー)


文部科学省「地(知)の拠点整備事業(大学COC事業)」は、大学等が自治体を中心に地域社会と連携し、全学的に地域を志向した教育・研究・社会貢献を進める大学等を支援することで、課題解決に資する様々な人材や情報・技術が集まる、地域コミュニティの中核的存在としての大学の機能強化を図ることを目的としている。東北工業大学において、まず教育では、地域社会に求められる人材育成を、連携協定を結んでいる仙台市をフィールドに、具体的には、地下鉄沿線のまちづくりなどをテーマに課題発見・解決に向けた教育をしている。研究では、せんだい創生プロジェクトとして、仙台市の課題のうち高齢化社会や防災等の課題に対して、研究プロジェクトを立ち上げている。また、公開講座などの社会貢献も行っている。最終的には、地域の産業文化の発展に貢献できる人材を育成したい。さらに平成27年度「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)」を学院大が代表校となって始まり、これから、仙台・宮城をフィールドに、地域で活躍できる人材の育成や地域産業の活性化に向けて推進していく。


(20)吉澤雅幸さん(日本分光学会東北支部長、日本物理学会東北支部長、東北大学大学院理学研究科物理学専攻 教授)


日本分光学会東北支部は比較的小さな組織で活動も休眠状態だったが、ナチュラルサイエンスからの要請で科学講座「光ってそもそもなんだろう?」に協力したり、光マップに情報提供している。日本分光学会東北支部としても、ナチュラルサイエンスの力を借りながら支部活動を何かしていきたいと考えている。一方、日本物理学会の方は大きな組織で、約20年前から出前授業を、年に十数件程度だが、会員の負担がない程度の回数で継続的に実施していく方針で続けている。また、物理教育学会東北支部が主催する、高校教員や教員志望の大学生むけの実験講習会にも協力している。学会の支部活動は皆ボランティア的にやっている方ばかりなので、どうしてもなかなか思い切ったものができない。そこで私が支部長の間に流れを上手くつくれたらと思っている。最後に宣伝だが、日本物理学会の年次大会が3月に東北学院大で行われ、市民科学講演会をイズミティで3月20日に開催する。テーマは「神岡の地下から探る宇宙の謎」。中畑先生や神田先生によるご講演のほか、今年度ノーベル賞を受賞した梶田先生にもご講演いただくことになった。来週にはチラシやポスターが配布されるので、よろしくお願い致します。


(21)末光眞希さん(応用物理学会東北支部長、東北大学 電気通信研究所 教授)


応用物理学会は、産業界とアカデミアの両方から約2万人の会員がいるのが大きな特徴。応用物理学会で「リフレッシュ理科教室」を始めた理由は、学会の研究者にアンケートをとると、小学生の頃に科学・技術に興味を持ち、分解等をしていたが、最近は身のまわりのものがブラックボックス化してそれを実感できない現状がある。一方、小中学校の先生方は文系のバックグラウンドの方が多いため、理科の本当のおもしろさや、理科が社会でどのように役立っているかを、必ずしもうまく伝えられていないのではないか。先生方にそれを教えたい。大学と産業界の両方からなる応物こそ、そのミッションに応えられるのではないかということで、1997年から、小中学校の先生方を対象にした理科教室「リフレッシュ理科教室を」を始めた。教えるために子どもたちにも一緒に来てもらう。しかし、いくつか問題がある。リフレッシュ理科教室は全国各支部が行うが、支部の幹事は2年で交代する体制のため継続性が弱い。かつ支部のオフィスはなく、教材も個人管理である。また教育委員会との結びつきが弱く、教員とタイアップが難しい。もうひとつの分析は、もともと小学生の時は皆理科が好きだが、嫌いになるきっかけは受験等である。一方で、高校物理の先生は理学部出身が多い。工学部のカリキュラムでは理科教員になるのはほぼ難しい。そのため理科のおもしろさは十分伝わっていると思うが、ものづくりや、理科がどのように社会に役立っているかは、ひょっとしたら弱いかもしれない。よくできる学生には「理学部に行け」と言っているかもしれない。その意味で高校生に教えることも大切で、ナチュラルサイエンスが行っている高校生に教える科学講座は素晴らしい。ぜひ支部としても一緒に連携してやっていきたい。


(22)岩瀬恵一さん(東北経済産業局地域経済部長)


東北で生まれた科学や技術の種を産業に活用されるように育てて、如何に産業化に結びつけていくかを、我々は日々の生業にしている。そのために、産学連携という切り口から施策を推進したり、地域の企業の方々に対して、色々な研究開発制度を紹介したり、活用いただいている。東北地方の企業向けに、色々なことをワンストップで支援できることを本日はお示しした。行政サービスとして一体的に対応するため、経産省の予算だけでなくNEDOやJST等の予算を研究開発に応じて活用いただくため、合同で予算説明会や相談会をする取組も行っている。また、研究開発の予算を活用いただいて、ある程度、芽が出そうになったら、如何に産業に活用いただくかという視点で、販路開発の支援や、標準化戦略に関する相談、知財経営に対する相談も日頃行っている。他の先生方から教育に関するお話があったが、東北において人材の厚みがますます増すことで、それがシーズとなり、シーズが産業化に結びつけていく、そんな美しい絵を描けたら良いと思っている。他の機関とも相談しながらぜひ進めていきたい。


(23)柴田孝博さん(JST科学コミュニケーションセンター事務局長)


国の科学技術基本計画に基づいて、JSTが「科学と社会の関係深化」を目指す一環で、ナチュラルサイエンスともつきあいがある。全国各地でサイエンスカフェ等の科学技術コミュニケーション活動は増えてきているが、その一方で、それらの活動が実施後に活用され、社会の声が政策提言や課題解決、知識創造にまでつながったという社会的実感はない。つまり、それぞれの活動が「単発」に終わってしまっているのが現状で、JST主催のサイエンスアゴラも然りである。そこで我々は、全国各地で開催される様々な科学技術コミュニケーション活動関係者のネットワークを形成し、科学と社会を対話することが当たり前という社会をつくりたいと考えている。ともに「科学とともにある社会」をつくりたい。特に仙台・宮城は先進地域であるため、今後も強力なパートナーとしてやっていきたい。


(24)佐藤伸一さん(株式会社日立ソリューションズ東日本)


私たちはサイエンスコミュニティの考えに賛同し、今後も協力させていただきたい。我々は地元のIT企業として、地域の子どもたちにITに触れてもらい、地元からIT技術者を輩出したいとの思いで、この活動に参加している。本日は「IT技術者の地産地消モデル」の積極活用による地域貢献についてお話する。まず「地産」については、サイエンスデイ等のイベントに参加し、子どもたちに対してITに触れる機会を提供する。次に中学生の頃に、職場紹介やインターン受け入れなどを行い、中学生向けにIT企業の紹介をする。そして高校や大学向けには、出張講師やインターンの受け入れにより、より専門的な知識を学生さんに提供する。次に、「地消」について、そうやって育てた優秀な地元学生を積極的に採用する。そして身につけた高い技術で地元のお仕事をいただき、税金を収めることで地域貢献し、また稼いだお金で地域に貢献していくというサイクルをまわしていきたい。最後に、私の地元である気仙沼でもサイエンスデイを開いていただき感謝申し上げる。また気仙沼でもぜひ実施いただきたい。


(参加者コメント)伊藤光子さん(ソニー株式会社 仙台テクノロジーセンター)


私どもの会社では2012年からサイエンスデイに参画。ソニーは創設者である井深さんが理科教育普及に力を入れて、それから50年以上にわたり理科教育普及活動を行っている。私は社会貢献を担当しているが、井深さんのDNAを受け継いで子どもたちに理科の楽しさを知ってもらいたいと活動している。サイエンスデイのほか、仙台テクノロジーセンターがある多賀城市からもワークショップのニーズを受けている。次年度には、地元の大学や企業等と連携して、「科学・技術の地産地消」ということで、「サイエンスデイ in 多賀城」を開催できるよう、ナチュラルサイエンスと連携しながらぜひ企画したいと考えている。今後ともよろしくお願いします。


公開:2016.02.01 主催・共催・コーディネート(報告)
文責:大草芳江

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